コラム 中級向け

オプション取引の基礎:4つの基本ポジションと損益のしくみ

2026-05-02

オプション取引は「券」を売り買いするだけ

オプション取引は、「将来こうできる券」を売り買いする取引です。

券には2種類あります:

  • 買える券(コール):将来、決まった値段で買える
  • 売れる券(プット):将来、決まった値段で売れる

押さえておくと混乱しないポイント

  • 券は証券取引所で常時売り買いされている(株と同じ)
  • 営業日の取引時間内なら、いつでも何度でも売買できる
  • 誰でも買い手にも売り手(発行者)にもなれる
  • 券の値段(プレミアム)は市場の需給で常に動いている。誰かが決める固定価格ではない

株のような何か」だと思って具体例を見てください。

なお実際にはコーラの券は取引されていませんが、説明のためにもしコーラの券があったらという設定で進めます。実際の取引では、株価指数(日経平均など)や商品(金、原油など)の券が活発に売買されています。

例①:「コーラを100円で買える券」を買ってみる

今日が5月7日だとします。コーラが1本100円で売られています。

市場では、こんな券が1株あたり10円で取引されています:

> 「6月12日(金)まで、コーラを100円で買える券」 > 現在の市場価格:1株あたり10円

この10円は需給で決まる時価で、刻々と変動しています(株価と同じ)。

あなたは、この券を10円で買いました。

約1ヶ月後の6月12日(金)、コーラの値段が変わっています。あなたはどうなる?

6月12日、コーラが500円に値上がりしていた場合

券のおかげで、市場で500円のコーラを100円で買えます。

やること金額
最初に券を買った-10円
券を使って100円でコーラ1本ゲット-100円
すぐ市場で500円で売る+500円
合計+390円の儲け

6月12日、コーラが50円に値下がりしていた場合

「100円で買える券」を使うと100円かかるけど、市場で50円で買えるので、券は使わない

やること金額
最初に券を買った-10円
券は使わずに捨てる0円
合計-10円の損

6月12日のコーラ価格別 損益まとめ

6月12日のコーラ価格券の使い方最終損益
50円使わない(市場で買う方が安い)-10円
80円使わない-10円
100円使わない(使っても得しない)-10円
110円使う:10円の差益、券代と相殺±0円
150円使う:50円差益 - 10円券代+40円
200円使う:100円差益 - 10円券代+90円
500円使う:400円差益 - 10円券代+390円
1,000円使う:900円差益 - 10円券代+890円

最大損失は10円固定、儲けは値上がり次第で青天井——表でも一目瞭然です。

6月12日のコーラ価格別 損益まとめ

6月12日のコーラ価格券の使い方最終損益
10円使う:90円差益 - 10円券代+80円
30円使う:70円差益 - 10円券代+60円
50円使う:50円差益 - 10円券代+40円
90円使う:10円差益 - 10円券代±0円
100円使わない(使っても得しない)-10円
150円使わない(市場で売る方が高い)-10円
200円使わない-10円

最大損失は10円固定、下がれば下がるほど儲け。コール買いと正反対のかたちです。

損益のグラフ

横軸が6月12日(満期)のコーラの値段、縦軸が儲けです。

損益価格100円(行使価格)±0損は-10円で固定青天井に儲け
    ポイント:
  • 値段が高くなればなるほど、儲けが青天井に増える
  • どれだけ下がっても、損は券代10円まで(券を使わなければいいだけ)

これがコール買いのすべてです。

例②:「コーラを100円で売れる券」を買ってみる

同じく5月7日。今度は市場で取引されている別の券を見ます:

> 「6月12日(金)まで、コーラを100円で売れる券」 > 現在の市場価格:1株あたり10円

あなたはこれも10円で買いました。

6月12日、コーラが30円に値下がりしていた場合

市場で30円のコーラを買って、券を使って100円で売れる。

やること金額
最初に券を買った-10円
コーラ1本を市場で30円で買う-30円
券を使って100円で売る+100円
合計+60円の儲け

6月12日、コーラが200円に値上がりしていた場合

「100円で売れる券」を使うと100円でしか売れない。市場で200円で売れるので、券は使わない。

やること金額
最初に券を買った-10円
券は使わずに捨てる0円
合計-10円の損

損益のグラフ

損益価格100円(行使価格)±0下がれば下がるほど儲け損は-10円で固定
    ポイント:
  • 値段が下がれば下がるほど、儲けが増える
  • どれだけ上がっても、損は券代10円まで

これがプット買いのすべてです。

例③:自分が券を**発行する側**になることもできる

ここまで「券を買う側」の話でしたが、オプション取引では自分が券を発行する側にもなれます。

「100円で買える券」を発行して10円で売った場合

10円を受け取れる代わりに、買い手が券を持ってきたら100円でコーラを売る義務を負います。

  • コーラが50円に値下がり → 買い手は券を使わない → +10円の儲け
  • コーラが500円に値上がり → 買い手が券を使ってきたら、自分は500円のコーラを100円で売らされる(400円の損) → 10円受け取り済みなので -390円の損
    つまり:
  • 儲けは券代10円まで
  • 損は値上がり幅次第で青天井

買い手と発行者は、完全に正反対の損益になります。買い手の儲けは発行者の損、その逆も同じ。

4つのパターンまとめ

オプションは「2種類の券」×「買う/発行する」で4パターンです。

立場内容こうなれば嬉しい
コール買い「買える券」を買う大きく値上がり
コール発行(売り)「買える券」を発行する横ばい・値下がり
プット買い「売れる券」を買う大きく値下がり
プット発行(売り)「売れる券」を発行する横ばい・値上がり

買い手 = 保険を買う側。最初に券代を払うが、損失は券代まで。儲けは大きく狙える 発行者 = 保険を売る側。最初に券代を受け取るが、相場が逆に動くと大きく損する可能性がある

実際の取引:日経225オプションを例に

ここまでの「コーラの券」を、実際のオプション取引にあてはめてみます。

日本で個人投資家がよく使うのは日経225オプションです。「コーラの値段」が「日経平均」に置き換わるだけ。

1セット=1,000株まとめ売り

オプションは1個ずつでは買えません。1セット=1,000株分まとめ売り、と決まっています。

    「券代500円」と表示されている場合:
  • 1株あたり500円
  • 1,000株セットなので、実際の支払いは 500円 × 1,000 = 50万円

「1個100円のリンゴを12個パックで買ったら1,200円」と同じ仕組みです。

取引時間

時間帯時間
日中立会8:45〜15:15
夜間立会16:30〜翌5:55

土日祝は取引できません。営業日の取引時間内なら、いつでも売り買いの注文を出せます。

値段は市場で決まる:板情報

注文画面では、株と同じ板情報が見られます。

売り注文価格買い注文
100枚510円
50枚505円
500円(直近の取引価格)
495円80枚
490円200枚

券代500円という値段は、市場で実際に取引されている時価で、需給で常に変動しています。誰かが決めた固定価格ではありません。

満期日:6月限なら2026年6月12日

オプションの満期日は、各月第2金曜日と決まっています。

限月満期日
2026年5月限5月8日(金)
2026年6月限6月12日(金)
2026年7月限7月10日(金)

満期日の朝、その日の寄り付きから計算されるSQ値自動的に損益が確定します。「券を使う/使わない」を判断する必要はなく、システムが勝手に処理してくれます。

実際の注文例:5月13日に日経のコールを買う

たとえば2026年5月13日(水)の午前11時、日経平均が35,000円で取引されているとします。

注文画面で、こう入力します:

> 銘柄:日経225オプション > 限月:2026年6月限 > 種類:コール > 権利行使価格:36,000円 > 売買:買い > 価格:500円(指値) > 数量:1単位

これは「6月12日まで、日経を36,000円で買える券を、1株あたり500円で1,000株分買う」という意味です。

注文が成立すると、口座から50万円(500円×1,000株)が引かれます。

6月12日(満期日)の結果

下の表は1株あたりの数字です。実際の損益は1,000倍してください。

6月12日のSQ値1株あたり清算金1株あたり損益実際の損益(1,000倍)
33,000円0円-500円-50万円
35,000円0円-500円-50万円
36,500円500円±0円±0円
37,000円1,000円+500円+50万円
38,000円2,000円+1,500円+150万円
40,000円4,000円+3,500円+350万円

「コーラの例」と同じ構造です。最大損失は最初に払った50万円、利益は値上がり次第で青天井。

満期前に途中で売ってもいい

満期日(6月12日)まで持つ必要はありません。いつでも反対売買で途中決済できます

5月13日に1株あたり500円で買った券が、5月20日に800円に値上がりしていれば、その時点で売却して1株あたり300円(× 1,000 = 30万円)の利益を確定できます。

実際、個人投資家の取引の多くは満期まで持たずに途中で売り買いして終わらせています。

券代(プレミアム)はなぜ動くか

券の値段は2つの要素で決まります。

① いま使ったらいくら得か(本源的価値)

    日経35,000円のとき:
  • 行使価格34,000円のコール → 即使えば1,000円得(本源的価値1,000円)
  • 行使価格36,000円のコール → 即使っても得しない(本源的価値0円)

② これから動くかもしれない期待値(時間的価値)

「いま使っても得しない」券でも、満期までに価格が動けば化けるかもしれない。その期待値が値段に乗ります。

  • 満期が遠いほど高い:時間が長ければ動くチャンス多い
  • 値動きが激しい相場ほど高い
  • 満期が近づくほど安くなる(時間切れに近づくから)

注意:相場が動かないと券の値段が減っていく

5月13日に1株あたり500円で買った「コール36,000」。2週間経っても日経が35,000円のままだと、券代は250円くらいに下がっていることがあります。

方向は当てたのに、値動きが小さくて時間切れで負ける——これが株や先物との大きな違いです。

券の3つの状態(ITM・OTM・ATM)

行使価格と現在価格の関係で、券は3つの状態に分かれます。

状態意味コールの例(日経35,000円のとき)
ITM(イン・ザ・マネー)いま使えば得する行使価格34,000円のコール
ATM(アット・ザ・マネー)ちょうど境目行使価格35,000円
OTM(アウト・オブ・ザ・マネー)いま使うと損する行使価格36,000円のコール
  • ITM:すぐ得する券。値段は高め
  • OTM:今は使えないが化けるかもしれない券。値段は安く宝くじ的
  • ATM:中間。時間的価値が最大

個人投資家にとっての留意点

  • 日経225オプションは1単位=1,000株まとめ売り。表示の「券代500円」は1株あたりで、実際の支払いは50万円、損益も全部1,000倍
  • 券を発行する側(売り)は証拠金が必要で、相場が急変すると追加証拠金(追証)が発生したり、強制決済されることがあります
  • 特にコールの発行(売り)は理論上の損失が無限大になり得るため、対策なしの売り建ては高度な手法とされます
  • 方向を当てても、満期までに十分動かなければ負けるのが、現物株や先物との一番大きな違いです
  • 仕組みを十分理解しないまま取引を始めると、想定外の損失を抱えやすい商品です

本サイトは用語解説および学習目的の情報提供であり、特定の投資手法や商品を推奨するものではありません。オプション取引はレバレッジが効く取引であり、自身の資金力・知識・経験に応じて慎重に判断してください。

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