配当課税の選択:申告不要・総合課税・申告分離の使い分け
2026-04-18
配当所得の基本
株式の配当金にかかる所得税・住民税は、他の所得と比べて課税方法の選択肢が多い点が特徴です。個人が受け取る上場株式等の配当には、以下の3つの選択肢があります。
- 申告不要制度(源泉徴収だけで完結)
- 総合課税(他の所得と合算して累進税率)
- 申告分離課税(20.315%の分離税率)
どれを選ぶかで実効税負担が大きく変わる可能性があります。
申告不要制度
仕組み
上場株式等の配当は、受取時に20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)が源泉徴収されます。この源泉徴収だけで課税関係を終わらせ、確定申告をしないという選択肢です。
メリット
- 手続き不要
- 扶養控除・配偶者控除の判定に影響しない(合計所得金額に含まれない)
- 国民健康保険料の算定にも影響しない
デメリット
- 配当控除(後述)が使えない
- 損益通算ができない
向いているケース
- 高所得者で既に累進税率が20%を超えている
- 損失との通算が必要ない
- 扶養から外れたくない(主婦・学生など)
総合課税
仕組み
配当を他の所得(給与・事業など)と合算して、所得税の累進税率(5〜45%)と住民税10%を適用する方式です。
配当控除
総合課税を選ぶ場合のメリットが配当控除です。国内株式の配当には、法人税との二重課税を調整するために税額控除が受けられます。
- 課税所得1,000万円以下の部分: 配当の10%を所得税額控除(+ 住民税2.8%)
- 課税所得1,000万円超の部分: 配当の5%を所得税額控除(+ 住民税1.4%)
メリット
- 低〜中所得者で配当控除を活用できる場合、源泉徴収より実効税率を下げられる
- 給与所得控除・基礎控除などの余裕枠と通算できる
デメリット
- 高所得者は累進税率が20%を超えるため不利
- 合計所得金額に算入される → 扶養控除・国保料に影響
- 外国株の配当は配当控除の対象外
- 上場株式の譲渡損失とは損益通算できない(!)
申告分離課税
仕組み
配当を他の所得と分離し、20.315%の分離税率で課税する方式です。申告不要制度と税率は同じですが、確定申告することで上場株式等の譲渡損失との損益通算が可能になります。
メリット
- 譲渡損失との損益通算が可能
- 繰越損失との通算も可能
- 税率は申告不要と同じ20.315%で固定
デメリット
- 配当控除は使えない
- 合計所得金額に算入される → 扶養控除・国保料に影響
向いているケース
- 同年または前年以前に株式譲渡損失がある
- 損益通算・繰越控除を活用したい
3方式の有利判定
配当控除の効果を表で比較
課税所得別に、配当を総合課税(配当控除適用)にした場合の実効税率と、源泉徴収20.315%を比較します。
| 課税所得 | 所得税率 | 総合課税の実効税率 (配当控除後、概算) | 申告分離・申告不要 | 有利 |
|---|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 約7.2% | 20.315% | 総合課税 |
| 195〜330万円 | 10% | 約7.2% | 20.315% | 総合課税 |
| 330〜695万円 | 20% | 約17.2% | 20.315% | 総合課税 |
| 695〜900万円 | 23% | 約20.2% | 20.315% | ほぼ同じ |
| 900〜1,800万円 | 33% | 約30.2% | 20.315% | 申告分離・申告不要 |
| 1,800万円超 | 40〜45% | 約37%以上 | 20.315% | 申告分離・申告不要 |
※上表は所得税部分のみの概算比較で、住民税の配当控除(2.8% / 1.4%)も同様に働きます。
概算の有利判定ライン
- 課税所得695万円あたりまで: 総合課税(配当控除活用)が有利になることが多い
- 課税所得695〜900万円: ほぼ同程度
- 課税所得900万円以上: 申告分離課税または申告不要が有利
- 損失との通算がある場合: 申告分離課税一択
住民税の非課税基準
住民税の均等割・所得割の非課税ラインを超えるかどうかも、申告判断に影響します。給与所得者が配当を総合課税で申告すると住民税の課税所得が増えるため、均等割非課税ライン付近にいる人は注意が必要です。
2022年税制改正の影響
2023年分(2024年3月申告)から、所得税と住民税の課税方式を一致させるルールに変更されました。
それ以前は「所得税は総合課税、住民税は申告不要」といったハイブリッドの選択が可能で、これが配当戦略の定番でした。現在は所得税で総合課税を選ぶと自動的に住民税も総合課税扱いになるため、配当控除を取りに行くと住民税・国保料・扶養判定に影響が及びます。
この改正の結果、総合課税が有利になる所得ラインはやや狭まったと言われます。特に扶養に入っている家族・国保加入の自営業者は、単純な税率比較だけでは判断できません。
外国株の配当
米国株などの外国株の配当には、以下の2段階の課税が発生します。
- 現地源泉税: 米国株なら10%
- 日本の税金: 20.315%
二重課税を避けるために外国税額控除を使って現地源泉税分を取り戻すことができますが、これは確定申告が必要です。また、配当控除の対象外なので、総合課税のメリットは限定的です。
なおNISA口座では外国税額控除は適用できません(日本側が最初から非課税なので、取り戻す税金がないため)。これは米国株高配当投資をNISAで行うときの重要な注意点です。
まとめ
| 方式 | 税率 | 損益通算 | 配当控除 | 合計所得への算入 |
|---|---|---|---|---|
| 申告不要 | 20.315% | 不可 | 不可 | されない |
| 総合課税 | 累進(5〜45%) | 不可 | 可 | される |
| 申告分離 | 20.315% | 可 | 不可 | される |
配当課税は選択肢が多く複雑な制度です。課税所得の水準・譲渡損失の有無・扶養や国保への影響を総合して判断する必要があり、「万人にとってのベスト」は存在しません。毎年の所得状況に応じて見直すべき領域と言えます。
参考リンク
- [国税庁 配当所得があるとき(配当控除)](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm)
- [国税庁 上場株式等の配当等に係る課税方式](https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1330.htm)
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免責: 本記事は用語・制度の一般的な解説であり、投資助言を行うものではありません。実際の投資判断はご自身の責任で行ってください。税制・制度の詳細は変更される可能性があるため、最新情報は各所管官庁の公式サイトでご確認ください。